義歯・入れ歯自由診療

有床義歯(デンチャー)治療について

義歯治療とは

有床義歯とは、虫歯や歯槽膿漏、歯周病等によって失ってしまった歯を補うために装着する人工の歯の事です。義歯床(歯肉に触れる部分)、人工歯維持装置(クラスプやレスト)、連結子(バー)などで構成されます。無歯顎の人のための総義歯(フルデンチャー・総入れ歯)と部分的に歯がない人のための部分床義歯(パーシャルデンチャー・部分入れ歯)とがあります。

レジン床総義歯
金属床総義歯

部分床義歯

ノンクラスプ義歯


義歯は、歯の欠損の場所を選ばず治療の適応範囲が広い治療法です。ブリッジと違い、歯をたくさん削る必要がなく、比較的治療の費用や時間もかかりません。また、取り外しが可能で手入れも楽な装置ですが、クラスプ(金具で歯を抱え込む留がね)をかける歯に負担がかかること、固定式でないため外れやすいこと、慣れるまでに違和感があるなどのデメリットがあります。また、噛む力は天然歯の約1/3程度に弱くなります。

義歯の種類

義歯は、使用材料や作製方法等により保険適応の義歯保険適応外義歯(自費診療)があります。部分床義歯の一般的なものはクラスプを使った義歯ですが、アタッチメントといわれるものを利用した入れ歯や、フレキサイト(弾力性のある)で留がねの無いノンクラスプ義歯というものもあります。また、アタッチメントの一種で、残っている歯根面に磁力を受ける面体を装着し義歯に小型で磁力の強い磁石を入れて固定するマグネット入れ歯といわれるものや、人工歯根(インプラント)で入れ歯を固定する方法など様々な種類の入れ歯 が開発されています。

◆レジン床義歯

歯肉に触れる部分が、ピンクのプラスチック(レジン)で作られた義歯で、保険適応できるのはすべてこのタイプの義歯です。プラスチックのため壊れにくくするためにある程度の厚みが必要で、熱伝導性が低く食べ物の温度が感じにくいといった質的な難点があります。部分床義歯の場合は、通常残存歯にクラスプという留め金をかけ、欠損部と欠損部を床または金属のバーで連結します。

◆金属床義歯

義歯床の部分が金属で加工されている入れ歯のことを一般的に金属床義歯と呼びます。 金属を使用することにより、入れ歯を薄くすることが出来るため、使用する患者自体の負担が少ないことなどが特徴に挙げられます。 また、食べ物の温度も感じる事ができますし、発音しやすいというメリットもあります。また、入れ歯全体も、プラスチックのみで作った義歯のようなたわみを抑えることも出来ます。保険適応外義歯です。総義歯の金属床の場合は、特定療養費制度を使うことが可能で、保険診療分3~4万円程度が自費診療料金より差し引かれます。

◆ノンクラスプ義歯

歯を固定するために用いられる金属性のばねを用いず、クラスプ部分を義歯床と一体の樹脂で製作した、審美性に優れた義歯です。ただ軟質の義歯床材料を用いているため、経年的に顎堤が吸収したり歯が移動したりする場合があります。この欠点を補うため、当院では金属レストや金属床を併用したノンクラスプ義歯を推奨しております。保険適応外の義歯です。


◆マグネットアタッチメント義歯

残存している歯根部分にキーパー(磁性ステンレス)を装着し、義歯の裏側に強力な磁石を埋め込んで、両者の吸引力により吸着させ維持する義歯です。クラスプが見えないので審美性が良く、支台歯への負担も軽減されます。 令和4年4月より保険適応になりました。歯根の代わりにインプラントを利用してキーパーを付与することもできますが、この場合は保険適応外となります。

近年、医療現場においてMRI撮像の普及が進んでいます。MRI装置は強力な磁場を発生するので、マグネット義歯に対しても磁力が低下するなどの影響を与える危険性があります。撮影室には、必ず義歯を外して入室してください。歯根に装着されているキーパーは磁石ではなく磁性金属ですので、ほとんど影響はありませんが、撮影部位が口腔内周囲でキーパーと近接している場合は、金属アーチファクトによりどうしても読影ができないことがあります。その場合は、キーパーを一旦外さなければないこともあります。MRI検査の前に、歯科医師にご相談ください。

◆コーヌスクローネ義歯

維持装置としてクラスプ(バネ)を使わず、2重構造でできた冠を使った嵌め込み式の機構を用いた義歯です
支台となる歯を形成し、その上に被せる金属の内冠を作成し、その内冠に適合する外冠を組み込んだ義歯を作成します。インプラントを支台として用いることもあります。


茶筒の原理を利用して維持するので、クラスプを使用した義歯よりもよりしっかり固定でき、動揺も少なくなります。義歯全体を小さくすることができるため違和感が少なく、審美的にも優れています。ただ、精度の高い技工技術を必要とするので、製作日数がかかりますし、費用も高額になります。保険適応外義歯です。



◆コンフォート義歯

入れ歯の裏側の部分を「生体用シリコーン」というクッションで覆った全く新しい義歯です。生体用シリコーンは、表面硬度が柔らかく適度な柔軟性があり、口腔内の粘膜と同程度の弾性があります。そのため、シリコン義歯のコンフォートは噛んだ時の痛みを和らげ、吸着力が増すことにより安定して食べ物を噛みしめることができます。レジン床と異なり柔らかいので義歯用ブラシで強く擦ったりすると傷がつき、汚れがつきやすくなりますので使用は控えてください。専用の義歯洗浄剤を使用してください。またシリコンは経年的に劣化するので、その場合は張替えが必要です。保険適応外義歯です。

レジン床義歯   コンフォート義歯

義歯完成までの流れ

一般的な義歯完成までの流れは以下の通りです。欠損歯数や咬み合わせの状態等により来院回数は変わってきます。奥歯の少数歯欠損で咬み合わせが安定している場合で最短2回、総義歯で最短4回程度ですが、多数歯欠損で咬み合わせが安定しない場合やあごの骨が極端に吸収している場合、顎運動検査等が必要な場合などは、来院回数が2~3回増えることもあります。

  1. 口腔内や模型を見て義歯の設計を考え、治療計画をたてます。
  2. 印象採得(入れ歯の型を採ります)
  3. 咬合採得(咬み合わせを採ります)
  4. 試適(歯を仮配列して、歯並びやかみ合わせ等をチェックします)
  5. 装着(出来上がった義歯を調整して、口腔内に装着します)

義歯の取り扱い・注意点

  • 保険の義歯は、新製後6か月経たないと新しい義歯を作ることが出来ませんので、紛失等にご注意ください。
  • 新しい義歯が入ったといって、最初から何でも噛めるわけではありません。初めて義足をはめて、すぐには全力疾走ができないのと同じです。食材は小さくして柔らかいものから徐々に慣らしていってください。冠やブリッジと違って柔らかい歯肉や粘膜で咬む力を支えるのですから、強く当たるところがあれば当然傷が出来て痛みを生じます。普通に使えるようになるまでには、数回の調整が必要です。
  • 痛み等不具合がある場合は、調整しますので我慢せずにご連絡ください。痛いからといって、決してご自分で削ったりしないでください。義歯の維持安定を損なう場合があります。
  • 食後は取り外して必ず洗ってください。義歯用歯ブラシを用いると効率よく清掃できます。また、バネのかかっている歯は特に虫歯になりやすいので、ご自分の歯もよく磨いて下さい。
  • 清掃時に落として割れてしまったり、そのまま流して紛失することがありますので、水を張った洗面器やボウルの上で清掃することをお勧めします。
  • 必要に応じて義歯性清掃剤をお使いください。義歯に傷がついたりしますので、研磨剤の入った歯磨剤は使用しないでください。
  • 部分入れ歯は、残っている歯の関係で着脱方向が決まるため、一方向からしか着脱できません。新製時には、よく説明をお聞きになって着脱方向を覚えてください。
  • 義歯は咬みこんで入れたりせず、最後まで手でしっかりと装着してください。破損の原因になります。また、外すときは、バネを持って外してください。
  • 義歯は、使っているうちに人工歯が擦り減ったり、あごの骨が吸収したりして咬み合わせがずれてくることがあるので、定期検診が必須です。少なくとも6か月に一度は、歯科医院で点検を受けてください。

義歯のトラブル

  • 義歯は、具合が悪いとか破損した場合でも、大概の場合調整や修理することにより、継続的に使用することができます。医療保険で作った義歯は医療保険で修理できますが、保険適応外の義歯は医療保険を使って修理することはできませんので、注意が必要です。
  • 義歯が当たって歯ぐきが痛い:咬み合わせを調整したり、当たりを調べて削ることで治ります。
  • 部分床義歯が外れやすい:バネをしめることで外れにくくなります。
  • 義歯が割れた:簡単なものはチェアーサイドで直せる場合もありますが、複雑に割れている場合 は、型を採って直す場合もあります。
  • バネが壊れた:型をとってバネを作っておいてから、義歯を修理して直します。
  • あごの骨が痩せて、入れ歯が緩くなった:義歯の内側に義歯床用硬質裏装材で裏打ちをして直します。下顎の総義歯で、顎堤の吸収が著しいとか粘膜が非薄であるなど症状の改善が困難な場合は、医療保険でシリコン系、アクリル系の軟質裏装材を用いることができます。

入れ歯にご不満をお持ちの方、または入れ歯について相談されたい方は、是非お気軽にご相談下さい。